フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
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デビッド・カークパトリック
日経BP社
売り上げランキング: 34
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映画「ソーシャル・ネットワーク」が思いのほか面白かったので購入し、思いのほか分厚かったので積ん読状態となっていた本書だがようやく読み終えた。
ネットや友人の評価によると原作よりもこちらの方が面白いらしい。
私としても表紙の写真やサブタイトルもサブタイトルが原作よりも好みだったのでこちらを選んだ。
本書は言わずもがな、Facebookの創業物語だ。
ゴールドマン・サックスが時価総額500億の評価をした、だとか
先日の春のBAN祭りであるとか
良くも悪くも今年のWebの話題をさらい、まさに絶頂のフェイスブックだが、本書はまるでいにしえの英雄の物語を読むような錯覚に襲われる。
建国の英雄の物語。
新しくできた国はFacebook、英雄の名前はマーク・ザッカーバーグ。
通常の伝記と異なるのは建国の日が2004年2月4日であることだ。
たったの7年前。
私たちと同じ時代の物語だということが、読み進めるうちに否が応でも、読者の興奮を高める。
ドッグイヤーと呼ばれるシリコンバレーの時間の流れも擬似的ではあるが体験できる。
目次はこうだ。
第1章 すべての始まり本書では、というかFacebookの創業者たちは、よくFacebookをひとつの国に例える、が、Facebookに限らずWebアプリケーションというものは多かれ少なかれ国のあり方に似ているところがある。
第2章 パロアルト
第3章 フェイスブック以前
第4章 2004年、秋
第5章 投資家
第6章 本物の企業へ
第7章 2005年、秋
第8章 CEOの試練
第9章 2006年
第10章 プライバシー
第11章 プラットフォーム
第12章 150億ドル
第13章 金を稼ぐ
第14章 フェイスブックと世界
第15章 世界の仕組みを変える
第16章 フェイスブックの進化
第17章 未来へ
やや乱暴だが、王様は開発者、民はユーザだ。
王様は法律を作る。法律とはつまりは仕組みだ。
民は王様が作った仕組みのなかで日々活動する。
王様は民が喜ぶであろう仕組み・国が発展するであろう仕組み -たとえば「いいね」ボタンなど- は目立つところに配置し、都合の悪い仕組み -たとえば退会ボタンなど- は目立たぬ所に配置することで民の活動を活性化させ、国の発展を図る。この仕組みが複雑であったり、意図が民に上手く伝わらなかったりすると、民の不満は溜まっていく。レスポンス速度が遅いなど民が活動することにストレスを覚える場合にも民の不満は溜まっていく。民の不満が蓄積し国の魅力がなくなれば、民は去り、国は滅亡する。
マーク・ザッカーバーグは王様だ。
後年はCEOとしての振る舞いも身につけていくが、立ち上げ当初はNapStarの創業者であるショーン・パーカーなど、周囲を支えるタレント達が、資金調達やマネタイズの部分を埋めていく。
マークはただひたすらに、WebアプリケーションとしてのFacebookの法律を作っていく。
そして最終的な到達地点、つまりWebアプリケーション"Facebook"のビジョンを示し続ける。
優れたビジョンを提示するのは優れた王様の必要条件だ。
マークのビジョンを理解できない者は振り落とされていくし
賛同できないものは去っていく。
Facebookはマークを中心に回っていく。
いま話題のFacebookの実名主義。
これも彼の理想とするWebの世界に必要不可欠なものだ。
本書では彼の理想とするWeb像が全編に散りばめられている。
その一部、特に実名主義に関する部分を紹介しよう。
2種類のアイデンティティをもつことは、不誠実さの見本だ
現代社会の透明性は、ひとりがふたつのアイデンティティを持つことを許さないなんというか、私自身、やや賛同しかねる、なんとも潔癖な意見だ。
しかし反対するのは容易くビジョンを示すのは難しい。
結局ビジョンを示せない者は、先ゆく天才の足を引っ張るか、もしくは天才の起こした流れに身を委ねるしかないのだ。
実名主義に限らず、どうもFacebookについての脊髄反射的なリアクションが多いように思う。(もちろんそうでないものも多い)
一度腰を落ち着けて、自分の理想とするWeb、理想とする世界を考えてみるのも悪くない時間の使い方ではないだろうか。
自分自身の理想が描けない者に、天才マーク・ザッカーバーグの思い描く未来を想像することなどできやしないのだから。
P.S.
第11章 プラットフォームではマーク、そしてFacebookの素晴らしいサードパーティへの考え方が示されている。
スピード感もあり、読み応えのある、繰り返し読みたいオススメの章だ。
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