2011/05/04

シンプル・イズ・ベスト - [書評] - ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義

ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義 (PHPビジネス新書)
藤野 英人
PHP研究所
売り上げランキング: 8411


私たちは小学生の頃から政治史を学ぶ機会は多い。
しかし経済史を学ぶ機会は少ない。

歴史は繰り返すというのに・・

本書は経済史の入門書。
視点が独特で面白い。

●はじめに-経済を見る「物差し」を見つけよう

●プロローグ 日本人の「ウミヒコ」と「ヤマヒコ」のDNAを探ろう

●第1章 驚きながらお金と経済を取り入れた日本人----古代から中世の日本人とお金
・第一講 海の向こうから新しいものがやってくる----遣唐使とお金
・第二講 マネーサプライを握った平氏----お金から見た源平合戦
・第三講 内向き政権・鎌倉幕府の興亡----土地への執着の始まり

●第2章 覇者の後ろに「お金」があった----中世の政治権力は金融と結びつく
・第四講 欲望を利用し、利用される----足利家はイベンストメントバンカーだった
・第五講 天才・信長の現代的経済政策----人々の欲望が煮えたぎった安土桃山時代
・第六講 お金と物流を管理する徳川幕府----国を閉じることの功罪

●第3章 上に政策あれば、下に対策あり----官の強権と向き合う近世の庶民
・第七講 江戸三大改革の光と影----名奉行たちの金融論
・第八講 グローバリズムに飲み込まれた幕末・明治の日本----困った政府の借金踏み倒し

●第4章 今を形づくる、明治、昭和の残像----国と個人が向き合い続けた現代の金融史
・第九講 投資が身近になり、夢とチャンスを紡ぎ出す
・第十講 今の日本に影響を与える「一九四〇年体制」

●第5章 日本史から読み解く未来のお金の物語
・1 経済観察に必要な三つの視点
・2 お金とは「未来の幸せの缶詰」
・3 今は日本史の中で珍しい「萎縮の時代」
・4 私たちが新しい歴史をつくる

●おわりに

 

シンプルな要点

本書の要点はたったの2点。

  1. 日本の経済史にはウミヒコとヤマヒコが交互に現れる。
  2. ウミヒコとヤマヒコどちらが現れるかは中国の強さに相関する


ウミヒコ・ヤマヒコというのは、神話「海幸彦と山幸彦」を用いた比喩だ。

日本人には冒険を好む、海洋民族的としてのウミヒコ的なDNAと
地味でコツコツ頑張る農耕民族としてのヤマヒコ的なDNAがあり
時代の流れも「外に開かれた時代」「内に向いた時代」が交互に現れるのだ、と。

そして、どちらの特性が現れるかはお隣りの大国・中国の強さに関係するのだ、と。

この2つの仮説を軸に古代から日本の経済史を順を追って読んでいく。
シンプルな仮説が最初に提示されるので、飽きずに、納得しながら読み進めることができる。

最後に、現代は?未来は?という話に行き着くころには著者・藤野英人氏の言わんとすることは容易に想像できるようになっている。

現代と歴史のリンク

近頃はニュースで「中国」の文字列を見かけない日はない。

その中国が2つの仮説の一端を担っているため、歴史を読みながらも頭の片隅ではどうしても現代のことが意識される。

現代とリンクさせて歴史を学べる。
つまりは、良書である。


最後に

著者の藤野英人氏は随分と長いことTwitterでフォローしていますが、ユーモラスな癒し系ツイートをなされます。
おすすめユーザです。


ぜひフォローしてみてください。



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