2011/03/28

インターネットの時代の超入門書 - [書評] - C言語すら知らなかった私がたった2か月でiPhoneアプリをリリースするためにやったこと


本書は昨年、はてなのホットエントリを賑わせたこのエントリに端を発している。

C言語すら知らなかった私が2ヶ月でiPhoneアプリをリリースするまでにやった事。 | Last Day. jp



内容は驚くほど読みやすい。


本書で語られる著者からの読者へのメッセージは次の2点に要約される。

ひとつは、All You Need is Passion
もうひとつは、ググれカスだ。

目次は以下のようになっている。
いや、目次の目次というべきか。

第1章 iPhoneアプリ開発の魅力
01 iPhoneプログラミングは難しくない
02 「プログラミングは理系出身しかできない」はまちがい
03 プログラミングに年齢は関係ない
04 プログラミングを好きになる
05 All You Need is Passion
06 Hello, World! ――コードを1行も書かなくてもビルドできる
07 ローリスクハイリターンが魅力のiPhoneアプリ開発
08 2か月間の時間割

第2章 基礎知識を身につける
09 開発効率をアップするアプリアイデアのつくり方
10 iPhoneアプリ開発の最短ルート「遅延評価勉強法」
11 短期集中でアプリ作成――鉄は熱いうちに打て
12 リリース日を決めてモチベーションを高める
13 時間ではなく自分を管理する――細切れ時間を活用する
14 基礎知識を固める(1)「C言語の習得」
15 基礎知識を固める(2)「UIKitの習得」
16 書いたコード行数と開発力は比例する
17 UIデザインを制する者がiPhoneアプリを制す
18 年齢不問「1500語でマスターする」非ネイティブ向け英語術
19 MBAホルダーから教えてもらった英語学習方法
20 開発につまずいたときの対処法

第3章 無料動画サイトで勉強する
21 「動画で勉強」のすゝめ
22 無料動画サイトは宝の山
23 おすすめ情報が満載のユーチューブチャンネル
24 フォトショップやイラストレーターの使い方も学べる
25 米国スタンフォード大学のiPhoneアプリ開発講座は必見
26 米国有名大学のiPhoneアプリ開発講座を探検する
27 きれいなHD動画で勉強もはかどる「ヴィメオ」

第4章 インターネットや書籍から良質な情報だけを見つける
28 ツイッターやソーシャルブックマークを使ったスピード情報収集術
29 最大の開発者向けQ&Aコミュニティサイト――スタックオーバーフロー
30 ネットワークやゲーム周辺技術を学べば開発が容易になる
31 無料で使えるサンプルコードやチュートリアル最大限に活用する
32 最強の情報源「アップル社の公式ドキュメント」を使い倒す
33 プログラミングブログを公開してコードを添削してもらう

第5章 1人でできる お金をかけないiPhoneアプリマーケティング
34 ブログを短期間で月間10万ページビューにする15個の戦略
35 ブログでアプリ情報を公開してたくさんの人に知ってもらう
36 ツイッターやフェイスブック――人気サービスを使い倒す
37 個人ブロガーを味方につける無料プレスリリース作成のすゝめ
38 iPhoneアプリをローカライズしてチャンスに備える
39 アプリレビューサイトにレビューを依頼する
40 多くの開発者がやらない海外販促活動を展開する――市場は世界



テーマその1 『ググれカス』

※ 本書中に『ググれカス』の文字列は登場しません。私の拡大解釈である点にご注意ください。

著者が読者に伝えるのは、アプリを作成するうえで有益だったサイトのURL、助けてくれたTwitterのアカウント、そして必要な情報に辿り着くための検索キーワードだ。

キーワードを示して「はい、終わり」という例も少なくない。
Objective-Cのソースコードは一行たりとも登場しない。

つまり本書は入門書としてよりもインターネットという巨大な書庫の目次としての色合いの方が濃い。

だが、これこそが本書の目的に最も合致する形のはずだ。
なぜか。

著者は冒頭でこのように述べている。

私自身iPhoneアプリ開発を始めるときに、そもそも何をすれば良いのか、どの書籍を最初に購入すべきか、どの勉強法が最も効率的なのかなど、頭の中にいくつもの疑問が浮かび上がりましたが、「これを読めばすべて解決!」と超初心者の指針になる書籍がありませんでした。本書は私の実体験をベースにして初心者でもiPhoneアプリを2ヶ月または短期間でリリースするためのマニュアルを目指しています。


著者がターゲットにしたのは「超初心者」だ。
紙面の量は限られているが、伝えなければならないことは山のようにある。
ソースコードの掲載は紙面を大幅に消費するうえ、それらの情報はすぐに陳腐化する。iOSもデバイスも日々更新されていくからだ。

陳腐化したときに著者がターゲットにした超初心者はどうなるか。。。


新しいことを始める時、ググるべきキーワードが分からないのが一番困るのだ。
特にiPhoneの場合、視覚的なイメージはあるのに名前が分からなくて苦労する場合が多いだろう。

例えばメール送信画面を開くとき下から、むにゅーっとせり上がってくるウィンドウ、あれを実現したい場合にどのように調べればいいのか。

本書はそのウィンドウの名前は教えてはくれない。
だがそれを調べる方法を教えてくれる。

インターネットが普及した今、すべてを紙面に詰め込む必要はない。
本書がとるこのアプローチはインターネット以前にはできなかったことであり、インターネット普及後の、あるべき超入門書の姿かもしれない。


テーマその2 『All You Need is Passion』


知識を得るための知識は著者によって示された。

あとは開発者たる自分自身が情熱を維持していけるかどうかだ、と、ここでも著者はやんわり読者を突き放す。

ただしそこには愛がある。

本書は1時間かけずに通読することができるうえ、情熱の維持が重要かつ難しいと考える著者は、読者の情熱を煽る文章をそこかしこに書いてくれている。

この本は、情熱が衰えてきたときに繰り返し手にとるようになるのだろう、
そんな予感がするのだ。

著者自身、情熱を維持するために繰り返し観てる動画があるそうだ。
私も好きな動画なので紹介させていただこうと思う。

ブログに直接貼ろうかとも考えたが、著者自身のエントリに飛んでいただいた方が良さそうだ。

未来は僕らの手の中 | Last Day. jp

Microsoft社が作った世界が近い将来どうなっているかを描いた動画です。新しいモノを作るには現代の最先端を想像するよりも未来の当たり前を想像する方がはるかに簡単だと聞いたことがあります。ぜひご覧になってください。


私の青春時代の愛読書『帯をギュッとね!』という柔道漫画で、練習のモチベーションを保つためにブルース・リーの映画を観るシーンがあるが、それを彷彿とさせて胸が熱い。


最後に


iPhoneにはまだまだ大きな可能性があります。

スティーブ・ジョブズが示したタッチパネルモバイルは当分の間主流の位置にいるでしょう。

ここまで偉そうに書評を書いてきましたが、実は私、iPhoneアプリ挫折なうの状態です。
情熱が足らなかったんですね。本書を読んで気がつきました。

私と同じように一度トライして挫折した方、作ってみたいけど難しそうだという先入観をお持ちの方、
ぜひ本書を手にとってみてください。

知らないがゆえに自分の可能性を狭めてしまうのはもったいないことです。
私ももう一度、アイデアの練り直しからトライしてみようと思います。


C言語すら知らなかった経営学部出身の著者が開発したアプリを使ってみたい。
そう思った方はぜひ

"appstore ray matayoshi"

でググってみてください。

 

追記 2011/04/08 :

このエントリでは伝えきれなかった本書の魅力をNo Second Lifeさんが語ってくれています。
合わせてお読みいただけると、より本書の内容が伝わるかと思います。

実は仕事術本だった 書評「たった2か月でiPhoneアプリをリリースするためにやったこと」 by またよしれい | No Second Life



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